以前webメディアに取り上げていただく機会に恵まれ、俳優の名高達男さんがインタビュアーとしてミラベルにお越し下さいました。

パンを実食していただき「パン教室への思い」というテーマでお話しさせていただきました。

 

滅多にない光栄な機会でしたので、状況が変わった部分はありますがアーカイブとして公開しております。

 

  • 2022年現在、コロナ禍の先が見通せないためパン教室はお休みしています。→ NEW2023.4月開講
  • 自家製酵母やパンの製法についても常に試行錯誤し改良を重ねており、文章中のものは現在と異なる部分もございます

 

 以上お含みおきください。

 

本物のパンづくりで
喜びを共有し伝えたい

 

 

プロフィール 埼玉県出身。早稲田大学商学部を卒業後、証券会社を経て、(株)キーエンスで営業職として活躍。どちらの会社でもトップクラスの実績を残したが、独力で勝負できる世界を求め退職。元々パンを食べることが好きで、退職後に旅行したフランスでパンづくりに強い興味を持ち、2003年からパン・ケーキづくりの世界に飛びこんだ。2004年には渡仏して国立製パン製菓協会(INBP)で学び、パン・ケーキなどの各種国家資格を取得。帰国した2009年に 「ラ・ミラベル」 をオープンした。【ホームページ


39歳でフランス全土のパン・ケーキ店を指導する国立製菓製パン協会(INBP)に留学し、本物のパン、菓子づくりを学んだ職人。それが埼玉県狭山市の 「ラ・ミラベル」 の代表、岡村薫氏だ。計測機器メーカーの営業を経験後、異色の転身を果たした岡村氏は、1930年代の機械に頼らないフランスのパンづくりを再現。添加物を含まず安心できる商品で、多くの人に食の喜びを与え続けている。その感動は、パンづくり教室を通じてさらに大きく広がりつつある。


中がもっちり、これが本物のフランスパン!


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インタビュアー 名高達男(俳優)

名高 フランスパンとお菓子の店、ラ・ミラベルさんにお邪魔しています。それにしても、このフランスパン、いい匂いだなぁ。さっそくですが、いただきます!

岡村 どうぞ、お召し上がりください。


名高 うん・・・! これはおいしい! 日本で売っているフランスパンは外も中も固いですが、岡村さんのパンは中がもっちりしていますね。この食感と風味がある深い味わいは、食べてみないとわからないだろうな。若い頃からたくさんのパンを口にしてきましたが、別格です! 


岡村 ご評価いただき、光栄です。


名高 だって、本当においしいですよ。世界一かもしれません。岡村オーナーはフランスでパンの修業を積まれたそうですが、以前は証券マンだったそうですね。


岡村 はい。「どんなことでも人の倍努力する!」 が信条で、他人の5倍くらいの件数を毎日飛び込みで回っていたんです。入社一年で結果が出て、ぼく一人で支店の月間収益の半分を達成しました。しかしバブルが崩壊し景気が悪化する中、お客様を大切にしない上司に反発して、センサーメーカーに転職し11年勤務しました。


39歳でパン職人を目指しフランスに留学


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名高 その後の歩みがどうパンづくりに結びつくのか気になるところです。


岡村 会社勤めだと、その時代の経済状況やお客様の業績の変化で、自社や自分の業務成績が大きく左右されます。それで、自分の力だけで勝負できる世界を求めて食の世界に入りました。自転車が趣味だったので、退職後にツールドフランスの観戦旅行をしたんですよ。その時にフランス各地のパンに出会い、興味を持ち、留学を決めました。それが2003年、39歳の時でした。


名高 39歳でパン職人の勉強を、しかもフランスで始めるというのは思い切りましたね。


岡村 前職で海外勤務の経験もありましたので、フランスでの生活もなんとかなると思いました。フランス語はゼロからの勉強でしたが、大学の語学クラスに通い、授業以外の時間にマラソンや自転車の練習をしながら勉強し、1年で国家上級試験に合格し、翌年INBPに入学しました。パンだけではなく、ケーキ、ショコラティエ、ジェラートなど計5つの国家資格を取得し、その後も5年間滞在していました。


名高 それはすごいな! 並の努力では達成できなかったと思います。しかも、フランスに行くまでは特にパンに興味があったわけでもなかったんですよね?


岡村 そうです。普通のパンしか食べていないし、特別興味があったわけではありません。「日本のフランスパンはおいしくないなぁ」 くらいしか思っていませんでした。その後、ツールドフランス観戦旅行中に出会ったフランスのパンがおいしくて、あまりに日本のものと違ったので、それがなぜなのか、違いは何なのか、おいしいパンはどのようにつくるのか、どうしても知りたくなったのでフランスで学ぶことにしたのです。

 また、それまでは株という目に見えないものやセンサー機器という工業製品を売る仕事を経験していたのに対し、パンやお菓子づくりは、自分の手でつくったものでお客様に喜んでもらえる。そして食の仕事は時代や場所にかかわらず普遍的なものだというのが、とても魅力的だと思いました。




INBPの図書館で昔のパンづくりを研究


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名高 岡村オーナーのつくるパンと他の店のパンはどこが違うのでしょう。あのおいしさにはどんな秘密があるのですか?



岡村 発酵の力で、小麦粉の旨味・甘味をいかに引き出すかが、重要と思っています。フランスのパンづくりは戦後機械化された影響で、まずいバゲットばかりになって、パンの消費量が戦前に比べ40%近く減少しました。そこで、「昔ながらのパンづくりをもう一度取り戻そう」 という動きが1993年から始まっていた。それでも、一日500本、有名店では1000本もバゲットを焼きますので大部分は機械に任せています。

 機械でつくる場合、生地がくっついてしまわないよう、水分を少なめにした生地を使用しないといけない。いっぽう、水分は多ければ多いほど乳酸発酵が起こり、小麦を酵母が分解して甘みが出て、味わい深いパンになります。ぼくのパン生地は熟練した人でないと扱うことも難しいほどべたべたです。それは機械化の浸透する1930年以前のフランスのパンだからです



本物のパンづくりで
喜びを共有し伝えたい

名高 そんな昔の製法を、どうやって学んだんですか?

 

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岡村 INBPの図書館に通い詰めて、膨大な文献を2年かけてたくさん読みました。たまたま、パンの世界大会で第3位になったチームの一員のお店が近くにあり、その人と仲良くなり、パンづくりについて語り、彼の友人たちを紹介いただき接したこともプラスしました。


名高 すさまじい情熱ですね。岡村オーナーのパンに懸ける思いがよくわかるお話です。


岡村 ありがとうございます。おいしい発酵をさせるには、水分をできるだけ多くする必要があるんです。それに当店のパンは、ショートニングやマーガリン、香料の入ったもの、農薬栽培の果物など体に悪い材料は一切使いません。


名高 え!? ショートニングやマーガリンは体によくないんですか。


岡村 ええ。「植物性で体にいい」 というイメージをお持ちの方も多いですが、実は違います。だから当店は、食パン、菓子パン、クロワッサンなどにはフランスでは当たり前に使われている発酵バターしか使いません。普通のバターに比べ発酵バターを使用したほうが、とてもおいしくなるんですよ。


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「都内の有名店よりもおいしい」と評判のお店だ

名高 そこまで違うものなんですか。すると、小麦粉にもかなりこだわってらっしゃるんでしょうね。


岡村 この店をオープンした当初は外国産を使っていましたが、今は北海道産に切り替えています。外国産は本来3ヶ月が賞味期限の小麦を、船で3ヶ月もかけて輸入するのですから、輸入時に長持ちするよういろいろと細工されているんです。


名高 その他にも何か、おいしいパンをつくる秘密はありますか?


岡村 日本古来の麹からつくる自家製酵母を使用しています。しかも、小麦粉に対して100%の酵母を使用して使っているのです。発酵食品はどんな酵母を使用するかによって味の良し悪しが決まります。麹は、お米に入れると砂糖を入れていないのに甘味と旨味を引き出してくれます。また、最近はやりの塩麹にお肉を漬けると、お肉が柔らかくなるように、パンを柔らかくしてくれます。


パン教室で生徒と喜びを共有したい


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こだわりの製法でつくったパンの味は、どれも絶品!

岡村 麹を使用したパンはフランスにもありませんし、水分たっぷりの生地で手作りしているので、本場フランスのお店で一般的につくられているものとは異なった、味わいのあるパンになるわけです。本場フランスには当店よりもおいしいパンがあると思っていた妻と一緒に、フランスを旅行していろいろなパンを食べましたが、どれを食べても 「うちのパンのほうがおいしい」 と妻がびっくりしていました。それは、酵母の良さと発酵の取り方が要因なのです。

 妻だけではなく、当店のパンを初めて食べておいしさに驚く人は、フランスや都内の有名店のパンを食べたことのある人が多いです。皆さんには 「まさか、狭山市にフランスや都内よりおいしいパンがあるとは思わなかった」 とご評価いただいています。